東京湾に面した横浜の街が、4月4日からの3日間、都市型フェスティバル「CENTRAL MUSIC & ENTERTAINMENT FESTIVAL 2025」(以下、CENTRAL)の熱気に包まれた。「日本の響きを世界へ」というコンセプトを掲げ、Kアリーナ横浜、横浜赤レンガ倉庫、KT Zepp Yokohama、臨港パークと市内の主要文化施設を結んで、今年始めて開催されたこのフェスティバル。単なる音楽フェスの枠を超え、横浜の街全体をステージに変えた。

開催2日目となる4月5日、筆者は横浜の街に足を踏み入れた。みなとみらいの高層ビル群と満開の桜が晴天に映える中、まず目に入ったのは街のあちこちに設置されたCENTRALのシンボルである四角形のロゴ。桜木町駅やハンマーヘッドには、オリジナルデザインを施したコンテナが設置され、街全体がフェスの雰囲気に染まっていた。

街と共鳴する「CENTRAL FIELD」
最初に訪れたのは臨港パークの「CENTRAL FIELD」。横浜港を一望できる絶好のロケーションにある緑豊かな市民の憩いの場は、入場無料のエンターテインメントエリアとして開放されていた。

CENTRAL FIELDは、横浜市や公益財団法人横浜市観光協会と深く連携して作られており、音楽ファンだけでなく、横浜に訪れる旅行者や地元の方々にも、この新たな都市型フェスの楽しさを知ってほしいとの想いが込められている。
会場内には、世代を問わず楽しめるワークショップブースが点在。没入型ホラーコンテンツ「Immersive mobility」、セサミストリートやPEANUTSとのコラボレーションによる限定グッズ販売、「ぼっち・ざ・ろっく!」等のアニメ作品のトークステージなど、多彩なコンテンツで賑わっていた。
注目を集めていたのは、日向坂46の金村美玖による写真展「CENTRAL×金村美玖 展示企画『おもむく』」。同時期に横浜スタジアムで開催されている日向坂46「6回目のひな誕祭@横浜スタジアム」とのコラボレーション企画だ。「横浜」「ひな誕祭当日のリアルタイムな瞬間」「自身の日常」をテーマに撮り下ろした写真が、CENTRALのシンボルであるコンテナ内に展示されていた。

ちょうど同じタイミングで開催される『ひな誕祭』との連携は、どちらも『横浜という街とエンターテインメントを結び、地域への貢献を重ねていく』という同じ思いを持っているからこそ実現したもの。
また、CENTRAL FIELDのステージでは、パブリックビューイングが行われ、他会場で進行中のライブ映像が映し出されていた。子どもから大人まで、芝生に腰を下ろして音楽を楽しむ姿が印象的だった。

音楽とアートが融合する「Echoes Baa」
次に足を運んだのは、横浜赤レンガ倉庫の赤レンガパーク特設会場で開催されている「Echoes Baa」。このエリアはソニーミュージックが2024年9月に立ち上げたマネジメント&レーベル「Echoes」が主催・キュレーションしている。港町横浜の象徴でもある赤レンガの歴史ある建物と海に挟まれた空間に、クリエイティビティ溢れる空間が広がっていた。

会場には、ライブパフォーマンスエリアとDJフロアが設けられ、COIN PARKING DELIVERYやSIMONによる10メートルを超えるアートウォールが会場を彩る。音楽だけでなく、多彩なクリエイティビティで空間全体を演出することで、新しいフェスの形が提案されていた。

ポップアップショップ「Echoes Maaket」でのEchoesオリジナルグッズ販売や、YOASOBIと移動式書店「BOOK TRUCK」によるコラボレーション「旅する本屋さん YOASOBI号」がそれぞれを人気を集めていた。「旅する本屋さん YOASOBI号」ではEchoes Baa出演アーティストに関連する書籍を手に取る来場者の姿も。

特筆すべきは、シルクスクリーン印刷やラグ作りなどの体験型ワークショップだ。多くのフェスでは音楽を「聴きに来る」が、CENTRALではクリエイティブに自ら参加出来る場が提供されており、「参加して楽しむ」ということが出来るようになっていた。

会場を歩いて感じたのは、これが単なる音楽フェスとは一線を画す体験だということだ。当初は通常の音楽イベントを想定していたが、想像以上に楽しめる要素が多い。特にワークショップは記念になるし、まだ音楽が分からない子ども達でも楽しめる企画となっており、記憶にも残るフェスになったのではないだろうか。実際に、子ども達が参加し、楽しそうに声を上げていたのが印象的だった。

新レーベル「Echoes」参加アーティストが盛り上げるメインステージ
「Echoes Baa」のメインステージでは、この日トップバッターとしてYOASOBIが登場。「アイドル」「夜に駆ける」「UNDEAD」と冒頭から誰もが知るヒット曲を連発し、会場を一気に盛り上げていった。

途中、ボーカルのikuraによるMCの中で、”卒業シーズン”であることに触れ、会場の中で今年卒業した数名とやり取り。その次に披露した「ハルカ」を、その人たちに語りかけるように歌い、それを聴いた観客の涙がスクリーンに映し出されたシーンは感動的だった。新曲「PLAYERS」も交え、圧巻のライブだった。

その後、4組目に登場したasmiが「Echoes」に加わることを発表。「Echoesという場所から、自分の音楽を世界に響かせていきたい」というMCに会場からは大きな拍手が沸き起こった。

この日の最後に登場したMAISONdesは、「どこかにある六畳半アパートの、各部屋の住人の歌」をコンセプトに、楽曲ごとに「歌い手」「作り手」を替えて楽曲を送り出すという音楽プロジェクト。ライブでは、楽曲ごとにフィーチャーされているアーティストが次々と登場。ソロでも登場したasmiを始め、アユニ・D、かやゆー&乃紫、meiyo&Pii、りりあ。、水槽、花譜&ツミキ等のアーティスト達が続く豪華なステージとなった。

こうしたアーティストのコラボレーションから生まれる、それぞれ異なる世界観の楽曲を体感出来たこのステージこそが、「Echoes」が目指す世界観そのものであると伝えているかのうようなライブとなった。

YOASOBIやMAISONdesを擁する「Echoes」は、共鳴するアーティストの発掘と多様性を高めていくことを目指している。今回の「Echoes Baa」はまさに「Echoes」のコンセプトを体現するフェスとなっていた。「音楽や様々な表現があらゆる垣根を超えてこだまし、呼応し、成長していく」というビジョンと、「日本の響きを世界へ」というメッセージ。YOASOBIのライブ中、ikuraが言っていた「今年、初めて日本でやるライブなんです」という言葉に象徴されるように、既に海外でも活躍するアーティストが所属する「Echoes」が抱く、これから発掘されていくアーティストも含め、もっと世界に音楽を届けていきたいという想い。この日の公演は、そのことを強く感じさせるものだった。

これからのCENTRAL
今回CENTRALを訪れ、彼らが横浜という場所を選んだ理由がとてもよく分かった。近年、今回の会場ともなった「Kアリーナ」や「KT Zepp Yokohama」を始め大型アリーナが続々と開業し「音楽の街」としてのアイデンティティを確立しつつある横浜と共に新たな物語を描きたいという願い。そして、港町としての長い歴史を持つ横浜の特性が、「日本から世界へ」というCENTRALのアイデンティティと重なることにある。
横浜は江戸末期の開国の際に最初に開かれた港町の一つであり、日本の最先端として世界とつながり、日本の文化を世界に輸出してきた歴史を持つ。「日本の響きを世界へ」というCENTRALのコンセプトは、この地の歴史的役割と見事に共鳴していると感じる。かつて生糸や陶磁器など日本の伝統文化を世界に送り出した港から、今度は最先端の音楽やアートコンテンツを”輸出”していく拠点として、まさに横浜はうってつけの場所と言える。

今回、みなとみらい地区の至る所でCENTRALのロゴを見ることが出来た。桜木町駅駅前では、横浜市立桜丘高等学校吹奏楽部や横浜市消防音楽隊が演奏を行ったり、多くの商業施設内にはフォトスポットが設けられていたり、ステッカーが配布されるなど、協力関係が見られた。
CENTRALのロゴである四角形。これは来場者や、横浜を愛し暮らしを営んでいる方々、参加してくれるアーティストたちが音楽への想いを描きこめる場所として存在し、可能性や多様性を象徴している。「年齢、性別、文化、国境を超えたみんなで作り上げていくイベントでありたい」—この言葉には、このフェスを通じて新たな文化の創造に参加してほしいという願いが込められている。

そして注目すべきは、CENTRALというフェスだけではない。この日のステージを彩った「Echoes」レーベルの今後の展開も見逃せない。YOASOBIやMAISONdes等のアーティストマネジメントだけでなく、「MECRE(メクル)」というプラットフォーム運営を通して、クリエイターの出会いと共創を支援していく活動も行っている。音楽の枠を超え、様々な表現者たちの”こだま”を生み出す場として、この新レーベルの動向にも今後注目していきたい。
CENTRALが掲げる「新たな都市型フェスの楽しみ方」の提案は、初開催ながらも既に成功の兆しを見せている。既に台北、クアラルンプールでの公演も発表され、横浜の街全体を巻き込み、音楽だけでなく様々なエンターテインメントを融合させたこの試みが、日本の音楽文化の新たな発信拠点として成長していく過程を、これからも追っていきたい。
横浜の港から世界へ—CENTRALの奏でる響きが、ここから始まっていく。

Writer & Photographer:新居 祐介 / Yusuke Arai
京都出身。ビジネスプロデューサー、経営者。opus合同会社代表。東京を拠点として活動。IT・広告・写真関連の会社のマネジメントや経営者を歴任。プロデューサーとして著名メディアアーティストの大規模写真展及び写真集・作品販売のプロデュースや、写真コンテンツを活用した各種新規事業・イベント・企業タイアップ等のプロデュースを行う。opus合同会社ではオウンドメディア支援事業として戦略策定〜コンテンツ制作をトータルに支援している。フォトグラファーやコンポーザー、DJとしても活動中。
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※ライブ中の写真は公式素材です
